私がインターンとして初めてIT業界に飛び込んだ2010年、私には全くITの知識がありませんでした。
大学とか専門学校にも行っていなかったし、別にコーディングが趣味でもなかったので、本当にゼロからです。
そうすると、職場のそこここで交わされる会話がちんぷんかんぷんでして、
「コンパイル」「バッチ処理」「デービー(DB)」「ユーティーエフエイト(UTF-8)」…
ナニソレ?
横文字多いなー
ぐらいしかわからんわけです。
その都度周りに教えてもらっていても、効率的じゃないことに気づいたので、
「いっちょ体系的に勉強してみようか!」
そう思って、本屋に直行したんですが…
いやいや
どっから手ぇ付ければいいのよ?
…
今回は、私と同じように、書店で途方に暮れた方へ、
「どうすればITの知識を効率的に身につけられるか?」
私なりのアイデアをお伝えしたいと思います。
新しい知識を効率的に身につけるには?
なにか新しい領域を勉強する時、
まずは、その全体像と、全体像を構成する要素(エリア)を、ざっくり捉えることが肝要です。
そうすると、
「全体像のうち、だいたい4割のエリアは制覇できたから、次はあのエリアを勉強しよう。」
「今話している内容は、全体像のなかの、このあたりのエリアに近いな…」
というふうに、自分の頭の中で、段々と”あたり”がつけられるようになります。
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つまり、ITの知識を深めるためには、
「ITの全体像と、それを構成するエリアとは、なにか?」
を、まずは理解することが早道です。
IPA
IPA – 独立行政法人 情報処理推進機構 – は、ITパスポート試験などの情報処理技術者試験を運営している団体で、われらITプロフェッショナルにとって身近な存在です。
ITパスポート試験(IP)は、IT知識の全体を広く浅くカバーしており、基本情報技術者試験(FE)・応用情報技術者試験(AP)へ進むにつれて、各領域で問われる知識がだんだん深くなっていきます。
対するに、ITストラテジスト試験(ST)、システムアーキテクト試験(SA)、などは、それぞれの専門領域に特化した試験です。
例えば、
- IT知識にあまり馴染みがない文系の学生や就活生、新入社員に、まずはIPを受けてもらって
- 徐々に仕事でITの知識が必要になってきたら、FE→APへと進級
- さらに自分の得意分野が持てたら、関連する高度試験で腕試し
…みたいなロードマップを、IPAは引いているのかもしれません。
実際、ITプロフェッショナルがITの全体像を頭の中で形成する上で、情報処理技術者試験の試験による影響は、かなり大きいのではないか、と思います。
余談ですが、2021年3月に公開された、みずほ情報総研の調査によると、
IT企業(SI・ソフトウェア開発・販売など)の約47%は、「基本情報技術者試験の合格実績を採用時の参考情報にしている」と回答しました。
※引用: みずほ情報総研株式会社「令和2年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(情報処理技術者試験等の活用に関する調査) 調査報告書」P.20
たしかに、試験に受かれば、就職・転職の際のエントリーシートに書けますので、面接官に「ほう、こやつはなかなかITの知識があるんじゃのう」ということを、客観的に証明できます。
就職・転職活動の機会に、一度受験されることをオススメします!
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さて、IP・FE・APでは、難易度や試験形式に違いはあるものの、基本的に同じ試験範囲から問題が出題されます。
試験範囲は、以下の3つの領域によって構成されます。
(※詳細は、IPAのウェブサイト上のシラバスに掲載されています。)
- ストラテジ系
- マネジメント系
- テクノロジ系
ストラテジ系
ストラテジ系の試験範囲には、例えば、以下の領域が含まれます(※2022年7月時点)。
- 企業と法務 … 企業活動、法務
- 経営戦略 … 経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ
- システム戦略 … システム戦略、システム企画
一見すると、「これはITに関する試験内容なのか?」と思ってしまう内容ですが、
ITに関する仕事をする上で、「Why – なぜITが必要なのか?」という背景を理解しておく必要があります。
ITが必要なのは、言うまでもなく、それを必要とする個人ユーザや企業、団体などが、世の中に存在するからです。
このうち、企業に注目すると、
すべての企業は、基本的に、何らかの目的(お金を儲ける、誰かに貢献する、など)のために事業を営んでいます。
そして、その目的を達する過程で、ITを必要とします。
つまり、「本業が主、ITは従」という関係性が成り立ちます。
だから、
「企業とは何か?」
「どういう活動をしているのか?」
「どうやってITに投資しているか?」
についての基本を理解することが、なぜITが必要とされているかを理解することに繋がります。
言い換えると、ITを使う側(立場)を理解するための知識、とも言えます。
マネジメント系
マネジメント系の試験範囲は、例えば、以下の領域が含まれます(※2022年7月時点)。
- 開発技術 … システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
これらは、ソフトウェアベンダーやSI(システムインテグレータ)、情報システム部門などが、「How – どうやってITを提供するのか?」についての方法論です。
- 開発技術: 情報システムを開発するための手法、プロセス
- プロジェクトマネジメント: 開発を成功させるためのプロジェクト設計、スケジュール、人的リソースなどの管理
- サービスマネジメント: 情報システムにより実現するサービスの設計、運用、改善活動の管理
主に、ITを作る側(立場)のための知識、と言えます。
テクノロジ系
テクノロジ系の試験範囲は、例えば、以下の領域が含まれます(※2022年7月時点)。
- 基礎理論 … 基礎理論、アルゴリズムとプログラミング
- コンピュータシステム … コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア
- 技術要素 … 情報デザイン、情報メディア、データベース、ネットワーク、情報セキュリティ
ずばり、「What – ITとは何か?」を、技術的な観点から掘り下げた領域です。
コンピュータ、情報システム、ソフトウェアなどの動作原理から、アルゴリズム、データ構造、さらに離散数学のような、コンピュータの処理を支える基礎理論までが、網羅されています。
また、情報セキュリティのように、ITの利用者が身につけるべき知識も含まれているため、
ITを使う側と作る側、両方に関連する知識、と言えます。
おまけ: ITの「ゴールデンサークル」
IT知識を構成するストラテジ系/マネジメント系/テクノロジ系は、
いわゆる「ゴールデンサークル」に当てはめられます。
「ゴールデンサークル理論」は、Simon Sinekが「TED Talks」の中で提唱した、新しいマーケティング/リーダーシップ理論です。
曰く、優れたマーケターやリーダーは、まずは「Why」を語り、人々を惹き付ける、という…。
私は、この理論を学習にも応用できると感じました。
まず、IT知識の構成要素を、ゴールデンサークルにマップします。
次に、ストラテジ系→マネジメント系→テクノロジ系 の順序で学習を進めます。
なぜなら、「なぜ?」を知りたいと思うことは、知的好奇心の根幹であるため、「なぜ」を知らずして各論(具体論)から手を付けても、うまく知識が定着しない/学習意欲が持続しない/各論のピントがずれていく、という問題に陥りがちだからです。
ただし、「自分の興味ある分野がはっきりしていて、そこをどんどん研究したい」のであれば、この限りではありません。
むしろ、好きなことを優先していくほうが、習得がはかどるでしょう。
しかし、もしも、すでに確立された全体像とそれを構成する領域を、体系的に学びたいならば、ゴールデンサークルの中心部分から周辺部に向かってアプローチするほうが、効率的です。
併せて、「ITを使う側に関する知識か、それとも作る側のための知識か」を意識すれば、より整理しやすいと思います。
まとめ
ITの知識を効率的に学ぶならば、まずはその全体像と構成要素を理解すると良い。
IT知識は、以下の要素によって構成されている –
- ストラテジ系: 「Why – なぜITが必要なのか?」
- マネジメント系: 「How – どうやってITを提供するのか?」
- テクノロジ系: 「What – ITとは何か?(技術的観点)」